派遣生レポート

今後の自分を考えるヒントに マレーシア夏期学校

帝塚山学院大学 リベラルアーツ学部 リベラルアーツ学科 3年
岩本真耶

マレーシア夏期学校での3週間。それは私にとってひとことで言い表すことのできない、貴重な経験になりました。1日1日を過ごす中で、価値観が変わるような驚きと発見の連続でした。3週間という長いようで短い期間でしたが、盛りだくさんのプログラムを通し、学んだこと、気づいたことがたくさんあります。

そもそも私がこのマレーシア夏期学校に参加したのは、日本と異なった環境で今の自分がどれだけ身の回りのことを行えるかを試すためでした。実際に3週間マレーシアで生活をし、まだまだ足りない部分を実感し、今後なにをするべきかを明確にすることができました。そのように気づくことができたのは、周りの人々の影響が大きかったように思います。特に3週間共に過ごしたメンバー15人は異なったバックグラウンドですが、それぞれの個性が調和し、一体感が生まれ、絆が日に日に強くなっていったことを今でも覚えています。そんな仲間だからこそ、それぞれの良いところを吸収したいと思ったのかもしれません。

また、マレーシアの特徴でもある、多民族国家を自分自身の肌で感じたいという思いもありました。人種、文化、習慣、言語が異なるにもかかわらず、戦争などの争いをせず、平和に共存しているという事実をこの目で確認し、お互いに尊重しあう環境に心打たれました。今日、世界では人を傷つけるような事件が後を絶ちませんが、他人を受け入れる気持ちを大切にしたいし、ほかの人にもそうしてほしいと思います。

マレーシアでの生活を思い出すと、毎日が新鮮でした。 マレーシアに到着した翌日のこと。オリエンテーションで8:35に迎えのバスが来ると聞いていたため乗車してみると、IUKL(Infrastructure University Kuala Lumpur)行きではなくKL(Kuala Lumpur)市内行きだったのです。乗車時、運転手にIUKLを通るかをちゃんと確認していたのに、となんとも言えない気持ちになりましたが、その後、仲間が担当の先生と連絡をとり、迎えに来ていただきました。その時、マレーシア人の少しルーズな性質とそれをカバーするやさしさを知りました。

次に、いたるところに虫がいたことも新鮮な体験のひとつとして挙げられます。日本では室内に虫がいることは、なかなかありませんが、マレーシアではそれが普通でした。大学をはじめ、カフェテリア、寮、スーパーマーケットなどどこにでもいました。日本人の私はその事実を受け入れるには少し時間がかかってしまいましたが、マレーシア人は全く気にしていないようでした。虫に対する関心の無さに、環境、文化の違いを感じ取りました。

また食生活でも実感したことがあります。日本食といえばしょうゆや味噌を使った、体に優しい味つけですが、マレーシアではそうはいきませんでした。食べるもののほとんどが辛いか甘いかの両極端なのです。とうがらしが料理に入っているのは当たり前で、入っていない方が珍しいほどです。メニューによっては料理と別に、ソースのようなものがついてきます。それをかけると、舌が麻痺するほど辛くなってしまいます。また、マレーシアで有名なホワイトコーヒー。見た目は日本にもあるようなコーヒーなのですが、飲んでみると一転、砂糖入りの甘いコーヒーの味がします。私は辛いもの、甘いものが好きなので困りませんでしたが、苦手なメンバーは相当苦労していました。日本食が恋しいと言っていたメンバーも何人かいました。そのようなメンバーを見て、日本での食事のありがたさと食文化の違いを感じ、また環境に適応することの難しさを学びました。

日々の生活から環境の違いを感じていた私に、より一層体感させる出合いがありました。それは、モスクです。モスクとは、イスラム教の礼拝堂のことで、国民の約65%が信仰しているため、マレーシアにはより大きなモスクがいくつも建てられたのだと思います。私が初めてモスクを見たとき、言葉が出ませんでした。それは独特な形、色、柄に圧倒されたからです。マレーシア滞在中にいくつかのモスクを見ましたが、特に世界で4番目に大きい“スルタン・サラフディン・アブドゥル・アジズ・シャー・モスク(通称ブルーモスク)”は圧巻でした。モスクの壮大さに加え、青と白のコントラスト、壁一面に描かれた絵や文字(アラビア語)、大理石で造られた豪華な床などはどれも印象的で、今でも私の心の中に残っています。モスクに入る際、イスラム教は肌の露出を禁じているため、露出が多い場合、男女問わず、ケープのようなものを着なければ なりません。そして女性は必ず頭にスカーフを巻きます。ブルーモスクでは、私はスカーフのみでしたが、マスジッド・ネガラ(マレーシア国立モスク)では、ケープとスカーフの両方を着ました。モスクに入ると、神聖な場所に入っていいのかという葛藤と興味が交互にでてきました。そして、もっとモスクについて知りたいと思うようになりました。日本にも50以上ものモスクがあるそうですが、馴染みがないため、私はマレーシアに行くまで全く知りませんでした。きっとマレーシアに行く前の私のように、モスクのことを全く知らない方がいらっしゃると思います。ぜひ、モスクというものを実際に見ていただき、この気持ちを共有したいです。そして、モスクが異文化を理解するひとつの方法として、これからもマレーシアの地にあってほしいと願います。

このように、気づいたことや学んだことがたくさんありました。やはり滞在したからこそ気づけたように思います。そして、直にマレーシアの人々に関わらせていただいた中で、マレーシアの人々のやさしさや積極性、平等に接し受け入れてくれる心の大きさを体感し、私もそのような人になりたいと思いました。もちろん、日本人として、思いやりの心を持ち、他人に譲ることも忘れないつもりです。マレーシアの人々から学んだ良いところを自分のものにし、今後の自分のあり方というものを考えたいです。また、笑顔は世界共通だということも学びました。話す言葉がちがっても、笑顔は相手の気持ちを穏やかにし、自分自身もそのようになることができます。○○語を話せないからコミュニケーションをとることができないという考えは間違いです。話すことができなくても、思いを伝えることは可能ではないかと私は思います。そのためには相手に寄り添うことも重要です。寄り添うためにまずは、国籍など関係なくより多くの人と関わるべきではないでしょうか。
 マレーシアで過ごした3週間はあっという間でした。ハプニングも多々ありましたが、楽しかったこと、うれしかったこと、つらかったこと、悲しかったこと、すべてが私の経験です。そしてマレーシア夏期学校でのプログラムは私に人と関わることの喜びと大切さを教えてくれました。日本では気づくことができなかった、これから生きていく上で重要なことです。このような経験をさせていただき、感謝の思いでいっぱいです。マレーシア夏期学校に関わってくださった、マレーシア政府観光局の徳永さん、運営事務局の片桐さんをはじめ、Mr.Harold、IUKLの学生たち、そして日本で見守っていてくれた両親に感謝の気持ちを送ります。心から、本当にありがとうございます。

最後に、3週間とも共に過ごしたみんなへ。
 私が3週間過ごせたのはみんなのおかげです。これから先、何が起こるかわからないけれど、この経験を胸に前に進んでいきましょう。そしてこれからもよろしくお願いします。本当にありがとう!