派遣生レポート

これからの時代を豊かに生きるために必要なこと
~マレーシア夏期学校からの学び~

法政大学 現代福祉学部 福祉コミュニティ学科 4年
伊藤大貴

■はじめに

私たちが生きる世界はいつの時代も争うことをやめない。そうした争いはパレスチナの問題、ウクライナの問題など宗教や民族の違いを原因に起きているものがほとんどだ。「多様性を大切にしよう」と言われても、単一民族国家(厳密には違うが)で生きている私たちにはピンとこない。そんなピンとこない気持ちを少しでも解消したいと思ったのが、マレーシア・トゥルーリ―・アジア夏期学校に応募した動機である。マレー系、中国系、インド系、原住民、多様な民族が同じ国にいるとはどのようなことなのか、肌で体感してみたいと思ったのだ。幸いなことに本プログラムに参加して大学での講義、ホームステイ、企業訪問、現地名所視察などを通してマクロ、ミクロの視点からマレーシアを見ることができた。私がこのプログラムを通して学んだこと、感じたことを記したいと思う。

■マレーシアの空気

一言で言えばマレーシアには寛容な空気が流れている。良くいえば、日本のように時間に追われることなくのんびりしている。悪くいえば、何事にもルーズ。公共交通機関は時間通りにはこないし、集合時間になっても半分も人が揃っていない。予定変更はしょっちゅう。 でもマレーシアの人たちはこちらが頼めば極力その希望が通るように奔走してくれる。もちろん前述の通り、それがすべてうまくいくとは限らない。それでも私は「すべてがうまく行くわけではないけれど、人が喜んでくれるためになんとかしてあげたい」というマレーシアの人々の優しさ、ホスピタリティーに感動した。
 大学の講義が終わると現地で知り合った学生はしょっちゅう私たちを色々なところに連れて行ってくれた。私たちのわがままな注文にも嫌な顔ひとつせず応えてくれた。自分達の用事もあるだろうに。はたして私が同じことができるかと言われると難しい。人に優しくしなければと感じていても、忙しいなどと言い訳してなかなかできてないのが日本人かもしれない。

■マレーシアの多様性(1)

ここからはマレーシアの多様性について述べたいと思う。マレーシアは様々な民族がいるだけあって、どこに行ってもたいがい英語が 通じる。私が通っていたIUKL(Infrastructure University Kuala Lumpur)も多くの留学生(アジア、中東、アフリカなど)がいて、日本の大学のように留学生が珍しいという雰囲気は全くなかった。食べる物は違っても、授業で、食堂で、自由な時間に様々な国の人々が違和感なく話し合っている、多様な民族が共存している分、外部からの人を排除することなく受け入れることができる。3週間生活してみてそう実感した。

■マレーシアの多様性(2)

前述の通りマレーシアは多様な民族が集まってできた国である。その上で欠かすことができないのがプミプトラ政策である。プミプトラ政策は一言で言えばマレー系住民優遇政策である。国立大学試験や公務員試験などでマレー系住民が優遇されている。出世などに関しても同じことが言えるらしい。
 これはマレー系と中華系が対立した歴史からできた政策であり、現在対立はしていないもののお互いの民族間の溝は大きい。マレーシアではマレー系と中華系の恋愛をセンセーショナルに描いた映画があったり、大学で知り合った中華系の友人も「もし自分の子どもが中華系以外の人と結婚したら悲しい……」とこっそり教えてくれた。このようにマレーシアは民族間で表立った対立がなくても、お互いに距離をとりながら生活している。
 これについて私はとやかく言う立場にはないが、お互いがもう少し相互効果を増す日が来てくれたらうれしい。乗り越えなければならない宗教、それを含む食生活の問題があるのはもちろんだけれども。2020年までに先進国入りを目指すマレーシアが、プミプトラ政策の壁を超えて行くことを期待したい。

■今回の学びをどう生かすか?

私は大学で地域づくりを学んでいて、地域にある多様な利害を乗り越えて、 そこに住む方々どうすればいきいきと暮らすことができるか学び、考えてきた。そんな私が今回のマレーシア・トゥルーリ―・アジア夏期学校を通して学べたことをここに記したいと思う。それらは地域づくりだけでなくこれからの人生を過ごす上でもとても大切なことだと考えている。

・多様性を受け入れる

実際に日本の様々な地域を訪れても、実に様々な人がいるなと感じていたが、マレーシアはそれ以上に多様な人がいた。多様な人々が共に上手に暮らしていくにはそれを受け入れる度量、寛容さが必要だと学んだ。

・相手に喜んでもらう精神

先述したがマレーシアで私が一番感動したのは、相手のために一生懸命になるマレーシアの人々の姿である。相手のために心から尽くすホスピタリティーは観光振興などに重要なキーワードになってくるが、それ以前に相手のために尽くすことは自分自身の幸せに繋がるのではないかとマレーシアの人々を見ていて思った。

■さいごに

マレーシア政府観光局の徳永さん、運営事務局の片桐さん、IUKLのHaroldさん、現地の学生をはじめこのプログラムに関わったすべての人に感謝致します。 また、今回のプログラムにいっしょに行った15人の仲間にも感謝します。 私は今回のプログラム最年長だったのですが、他のメンバーから学ぶことが多々ありました。これからも仲間を見習って自己研鑽しなければならないなと思いました。

今回のプログラムで出会えた全ての人に感謝を込めて。

Terima kasih!