派遣生レポート

マレーシアと日本

小樽商科大学 商学部 商学科 2年
井上敦晧

「昔の日本に似ている」と、マレーシア郊外を訪れたとき、私達メンバーのうちの一人がポツリと言ったことを私は覚えています。日本は開国から一気に経済発展を遂げ、第二次世界大戦で大打撃を受けつつも、その後復興、さらに発展を遂げ先進国に見事仲間入りした国です。その発展途上期の日本と今のマレーシア、その息つく間もなく発展し続けるその勢いに、どこか似た雰囲気を感じたのは私も同じです。そしてマレーシアも現在、マハティール元首相が考案された「ルックイースト政策」並びに「ビジョン2020」によって日本と同じように先進国の仲間入りしようと試みています。状況的には昔の日本と同じマレーシア。しかし、マレーシアは日本が持っていない「強み」をいくつも持っています。このマレーシアと日本について、自分なりに書いてみました。

~マレーシアの強み~

マレーシアはいまだ海外に対して日本ほど強いイメージを打ち出すことはできていないと思います。しかし、潜在的な力は日本に劣らない、むしろ打ち勝つことができるものであるとこのプログラムに参加して感じました。まず、発展し続ける今の好景気という状態、これは非常に強い国力を産み出す要因の一つでしょう。都市圏にはツインタワーをはじめ、大手ブランドが店を構える5,6階建て程の超大型ショッピングモールが乱立しています。そうしたモダンなショッピングモールから一歩外に出ればアジアの雰囲気を持つ屋台郡が現れ、マレー料理だけではなく、中華系、インド料理等の多彩なアジア料理に舌鼓を打つことができます。屋台は食べ物だけでなく服やカバン等もあり、そこではハプニング満載の値引き交渉文化にも触れることもできます。都市を少し離れれば、モスクなどを代表とするイスラーム文化や中華系文化からくる寺院の数々など多くの文化財産も点在し、国としての魅力が豊富に存 在します。そして、もう一つ付け加えなければならないのはメンバー誰しもが驚いた、マレーシア人の圧倒的な言語能力の高さでしょう。 マレーシア人は基本的に3つの言語を操ることができるのです。

マレー語、中国語、英語といったように、トリリンガルが標準的です。様々な文化、民族が織り交ざっているマレーシアでは話す言語も織り交ざっています。現地で知り合ったマレーシア人の中には5ヶ国語を操る人もいました。このことは、英語圏、中国語圏の人々にとってマレーシアは非常に訪れやすい場所であるといった状況を生み出しています。加えて、多言語多民族国家であるマレーシアに住む人々は、外国人が街なかを歩いていても驚きません。まさに世界に開けた国、それがマレーシアだと言えます。

このように、ビジネストリップのMICE(Meeting、Incentive、ConferenceまたはConvention、Exhibitionの略で、旅行業態のひとつ)等の観光産業もそうですが、さらにイスラム市場という独特な市場も抱えているマレーシアは今後世界の中でも大きな存在になっていく可能性が秘められています。

もちろん、良い点ばかりではありません。少し都市を離れれば、整備されていない設備(特に衛生面!)が数多く見受けられます。しかしそのような成長の余地のある部分を埋めていったとき、もしかしたら日本をしのぎ世界においてより大きな存在になっていくかもしれません。

~日本から見るマレーシア~

日本は現在、不景気という社会状況にあります。この状況を打開するヒントがマレーシアにはあると思います。観光面における文化財産の有効活用と効果的な多言語教育環境により国を世界に開き、海外資本も流入、そして経済発展政策、このようにしてマレーシアは今良い波に乗っています。日本はその点どうでしょうか。もちろん日本の魅力的な点もたくさんあります。製品やサービスの質の良さ、それらから培った全世界への「メイドインジャパン」の信頼、高い技術力、整った設備環境、そして魅力的な和文化等です。しかし、それらを十分に活かせず、停滞状態の社会を生み出しているのではないでしょうか。マレーシアを見習い、海外をも巻き込んだ経済発展の形をもって豊かな国を目指すべきなのではないか。そしてそのためにも、海外規模で日本を見ることができる、そしてその場で活躍できる世界に対応する力を持ったグローバル人材が日本で求められていくべきではないか、と思います。

~グローバル人材~

グローバル人材に必要なものは3つ、「語学力」「自分の考え方の軸」そして「柔軟に対応できるコミュニケーション能力」であると聞いたことがあります。語学力はもちろん、考え方の軸、そしてコミュニケーション能力はより大事なのではないかと考えます。軸は色々な経験によって形成されます。コミュニケーション能力も然りです。色々な文化を背景とする相手と対峙するグローバル社会では、自分がぶれない、そしてぶれないなかで、様々な人々に対応する人間力が求められていると思います。そして、そうした人間像を必要とするのはグローバル社会だけではありません。
 今回16人で派遣されたこのプログラムでは、見ず知らずの大学生の人たちと部屋、生活、そしてアクティビティを共にするというものでした。同じ日本人でも、それぞれ違った軸、そしてそれぞれ違ったコミュニケーション方法を持っています。グローバル社会だけでなく、日本社会においても様々な背景を持っている人々ととるコミュニケーションの中で物事をしっかりと見極めていく能力が必要なのではないかと思います。そのためにも大学生のうちに多彩な経験、そして様々な知識を蓄えておくことの必要性を感じました。そしてこのマレーシア夏季学校はその様々な軸をもった人々との出会いと、マレーシアでしかできない特別な経験を私に与えてくれました。これらをもってまた自分を見つめなおし、自分の将来に、そして社会に役立てていけたらと思います。

最後にこのプログラムを手配して下さったマレーシア政府観光局の徳永さん、運営事務局の片桐さん、クアラルンプールの大学(IUKL)の皆さん、関係者の皆さん、そして16人のメンバーに感謝の気持ちを綴り、締めさせて頂きたいと思います。充実した経験への感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。