派遣生レポート

初めての海外・初めてのペナンで学んだこと

東京未来大学 モチベーション行動科学部
モチベーション行動科学科 4年 鈴木 聖也

<ペナン春期学校2016との出会い>

機内からの風景

「鈴木君、面白そうなプログラムがあるんだけど、チャレンジしてみない?」私と「ペナン春期学校2016」との出会いは、こんな一言がきっかけだった。
 私自身、大学入学当初から海外で是非学んでみたいという希望はあったが、経済的な面も含め、なかなか機会に恵まれずに半ば諦めかけていたところ、所属しているゼミの教授からこのプログラムの公募を紹介された。その時は、ペナンはおろかマレーシアという国についての知識すら、まだ皆無に等しかった。しかし、このプログラムの参加を目指そうと決心してからは、教授やマレーシアに留学経験のある先輩に話を聞いたり、インターネットで検索をしたりと、様々な方法を駆使してマレーシアという国、ペナンという地域について詳しく調べ、様々なことが見えてきた。
 私が最も感心したのは、マレーシアという国は、多様な文化が混ざり合いながらもお互いの価値観を認め合い、尊重し、共存し合っているということである。

初日 屋台ランチ
 また、2015年末にASEAN経済共同体(AEC)が発足したことにより、同地域のさらなる経済発展が見込まれている中、マレーシアは今後のASEANの発展をけん引する国の一つであるということも理解した。
 一方で、マレー半島北部に位置するペナン島は、「東洋の真珠」と呼ばれ、歴史と自然と現代が入り混じるリゾート地として有名であることを知った。特にユネスコ世界遺産に登録されている「ジョージタウン」やマレーシアきってのメシがうまい地域としても有名であることは魅力的な情報であった。
 知れば知るほど、私はマレーシアという国、ペナンという地域に魅かれていった。それと同時に、大学生活の中で、おそらくこれが自分にとって海外で学ぶことができる最後のチャンスになるかもしれないと思い、このプログラムに志願した。

支援学校での集合写真
 成田空港からクアラルンプールを経由して約12時間、不安と期待が入り混じる中、私はペナンに到着した。現地のスタッフの方々に温かく迎えられ、少しの緊張はありつつも、いったいこの先どんな日々が待っているのだろうと、とてもワクワクしたのを今でも鮮明に覚えている。1年中夏のペナンはやはり暑く、冬真っ只中の日本から来た私には目眩がするような気温だったが、雲一つない晴れ渡った青空に「ようこそペナンへ!」と出迎えられているように感じられた。

<ペナン全般について感じたこと>

TARCでの集合写真
 ここからは、私がこのプログラムを通じてペナンについて、また日本を振り返って感じたことについて記していきたい。中にはマレーシア全般についても言えることが多々あると思うが、ここではペナンを主にして記そうと思う。
 ペナンでの10日間を通して終始感じたのは、一見ごちゃごちゃしているように見えつつも、マレー文化・中華文化・インド文化を中心に様々な文化が絶妙なバランスで共存しているということだ。もちろん日本においても、各国の料理を筆頭に飲食店やインテリアショップなどを通じて、様々な国の文化に触れることはできるが、あくまでもその国の文化の側面に触れているに過ぎず、それらの文化と共存しているとまでは言えないのが現状である。
タイ式 仏院
 しかし、私が過ごしたペナンでの10日間の中では、様々な文化が食・宗教・慣習などの多側面において、お互いを尊重し合いながら共存しているように感じた。このような感覚はペナン随所において感じることができるが、中でも特に顕著に表れていたのはマレーシア最大の極楽寺(Kek Lok Si Temple)という仏教寺院であった。
 高さ30メートルの7層式のパゴダ(仏塔)は、下層から順に中華様式・タイ様式・ビルマ様式の建築様式となっており、仏教という宗教にもマレーシアの多様性を感じた。もちろん全部が全部において協調や共存が上手くいっているわけではないと思うが、そうしたことを踏まえても、マレーシアという国の多様性を認める寛容さは世界トップクラスだと考える。
 プログラムの中で訪問した現地の各大学においても、それは例外ではなく感じられた。様々な国籍、人種、民族のバックグランドを持つ学生たちが時には母語、時には英語で分け隔てなく楽しそうに学生生活を送っている様子を見て、日本の大学とは根本的に違うのだなと率直に思った。
SENTRAL College チュウ講師
 一方、ペナンの地域全体の雰囲気については、とてもゆったりと時間が流れているように感じた。普段、目まぐるしく時間が流れていく日本で過ごしているせいもあるかもしれないが、朝夕の人が通る隙間もないくらいの交通渋滞を除けば(これもマレーシアらしさだが)、ペナンという地域ではとても穏やかに時間が流れている。
 とある休日の午後に宿泊先の学生寮の学生に連れられて近辺を散歩していたら、老若男女問わず、多くの人々が公園で何をするわけでもなく、くつろいでいる姿を見て、少し驚いた。やることが溢れている日本において、休日に多くの人々が公園でくつろぐ姿は、お花見などを除いて、私自身ほとんど見ることないので、その和やかな様子は大変印象深かった。それくらいペナンという地域は穏やかな時間が流れていると感じた。
 また、何よりも感動したのが、ペナンの人々のホスピタリティである。現地のスタッフの方々をはじめ、訪問先の各大学の学生、ホームステイ先のファミリー、屋台のおじさんやおばさん、関わって下さった全ての方たちが本当に面倒見よくお世話をしてくださった。相手の気持ちを察し行動する日本のおもてなしの文化も素晴らしいと思うが、絶えず声をかけ、気にかけてくれるペナンのおもてなしはどことなく温かく感じられ、懐かしい気持ちになった。

<日本について感じたこと>

極楽寺
 今回のプログラムを通じて、海外で活躍する日本企業を訪問したことも大きな経験となった。ペナンに進出している日本企業で働く方々にお会いし、お話をお伺いして、改めて日本について感じたことがある。
 それは、日本という国がとても素晴らしいということ、日本に生まれたことに誇りを感じたということだ。海外に出たからこそ、世界トップクラスを誇る商品の品質の高さや利便性、サービスの質の高さを再認識することができた。そして、如何に自分がそのものに恵まれていて、置かれている生活水準が高いかを再認識することができたことは、私の貴重な経験となった。
 特に日本文化の良さ、中でも日本食の素晴らしさや四季の美しさ、アイデンティティである日本文化について、外国人に対して誇りを持って紹介できるよう、あらためて勉強しなければならないと強く感じた。 しかし、その一方で、より一層グローバル化が進んでいく中で、日本が抱える課題も見えた気がした。

最終日 ディナー 集合写真
 これまでも既に十分に言われてきたかもしれないが、コミュニケーションツールとしての語学力の育成が、今日の日本の教育現場では必要に応じてなされていないと感じた。ペナンの学生たちは、それぞれ自分たちの民族的母語を大切にしつつも、授業をはじめ、社会交流は英語でのコミュニケーションを流暢にこなす。中には、なまりが強く聞き取りにくい時もあったが、それでもなんとかしてコミュニケーションを取ろうと積極的に話しかけてきてくれた。この姿勢こそが、私自身を含め、今の日本の学生たちに必要なスキルだと痛感した。
日本での英語教育は読み書きの習得は十分なものの、聞いて話すという経験は圧倒的に不足している。歴史的、地理的背景も少なからず関係していると思うが、特に話すことに関しての実践的なアウトプットの機会が極端に少なく、その結果として、知識はあるのに、実際の英語を使用する場面になると尻込みしてしまい、外国人に対して日本人はシャイという印象を与えてしまっているのだと考える。
 実際に今回のプログラムの中で、現地のスタッフや学生に”Don't be shy”と何度も言われてしまった。今こそ、教育現場でアウトプットの場を増やし、ツールとしての語学力を身に着ける必要があると考える。私自身も、発音や文法が間違っていても、下手くそでも良いから、とにかく自分の思いを伝えようとする姿勢をこれから意識していこうと思う。

<終わりに>
 今回の「ペナン春期学校2016」を通じて、ペナンの素晴らしさを知ることができたと共に、日本という国を客観的に見ることができ、その良さを再認識することができた。どちらの国にもそれぞれの良さがあり、お互いの良いところは積極的に取り入れ、手を取り合って共存していくことこそが真のグローバル化だと私は考える。その第一歩となる貴重な経験を出来たことを幸せに思う。

 最後に、今回このようなかけがえのない経験をすることができたのは、マレーシア政府観光局の徳永さんをはじめ、運営事務局の片桐さん、同行していただいた岩佐さん、ペナン教育観光センターの方々、各大学の学生さん、ホストファミリーのみなさん、このプログラムに関わって下さった全ての方、そして一緒に同じ時を過ごした15人の最高の仲間たちにあってのことだと痛感している。この場をお借りして心より感謝申し上げたい。



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