[2016.05.16] 「ペナン春期学校2016」参加学生レポート発表!
[2016.05.31] マレーシア教育研修セミナー開催!
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<国自体をも包み込むような熱気を体感>
今回マレーシアの地に足を初めて踏み入れ、十日間過ごした後に第一に感じたのは、日本という国は老けているのだという実感である。私たちは非常に発達した社会の中で守られて生きているということに痛切に思い至ったのだが、それは同時に人々の情熱を鎮静化させ老成させているようだなと感じたのである。
私が今回この研修に応募し、参加した理由は活気をこの身に感じてみたいという意識が大きい。
私が生まれたのは1995年の12月で、ちょうど阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きた年である。義務教育期間はちょうどゆとり教育が始まり、終わった期間にどっぷりとはまり込んでいた。そのようなときに育った私には、日本を盛り上げようと努力した先人たちが作り上げた『すでにできあがった日本』の中で、守られて育ってきたのだという思いがある。普段実感することができない部分を、現在発展途上であるマレーシアに行って見て学習することで、客観性をもった視点で日本を見たいと思った。成長過程における国の、国自体をも包み込むような熱気を体感し、日本の中でこれから生きていくにしても、グローバルな世界へと飛び立ちたくなるような焦燥感が手に入るのではないかとも感じた。
医師になるという私の夢をかなえるためには、地方国立医大に通い、6年間120人程度の数少ない学友と学習していくという、ある意味では最も閉鎖された空間に置かれて過ごすことが必須となる。家族と離れて海外という開けた地へと発つのは初めてだったので、6年間をそうして生きたのちにも世界へと目を向け続けて行くための試金石のような経験になりうると確信を持てた。
前置きが長くなってしまったが、これからいくつかの区分に分けてマレーシアで感じた諸々の物事を振り返っていこうと思う。
<ペナンの同世代の学生達>
<多様な言語・宗教・文化>
<ペナンの街の様子>
<ペナンの日本企業で感じた事>
<親日的な人々>
<終わりに>
最後に総括として考えたことを書いていく。それは、我々がマレーシアから学んでいけることは多いであろうということである。例えば、私たち学生にできる限り多くのマレーシア文化を体験させようと、毎日その日の日程が終わった後にもどこかへ連れて行こうとしてくれた心遣いには頭が下がった。こうした他人への思いやりや他人へかける情熱を、現代の日本人は「おもてなし」と言って私たち特有のものであるかのように自称しつつも、実は失いつつあるのではないか。老成し、出来上がった規範のなかで暮らしていくうちに、他への興味を失ってしまったのではないか、と考えた。
また、コスプレやアニメ文化を、日本文化の象徴として強く捉えられすぎているようにも感じた。これは、悪いことではないと思うが、日本で素晴らしいのはそれだけではないのである。
私たちは、日本文化を自身があまりよく分かっていない節がある。自分たち自身が理解して正しく発信することによってこそ、グローバル社会化が進み、地球全体が一つの村のようになっていく未来があったとしても、日本が個性を発揮し続けることができるのだと考える。
あとは、異なる存在への寛容性である。国籍も話す母国語も違う、持つ文化も違う人々が混ざり合って暮らすマレーシアの中で特にこれを強く実感した。彼らはお互いへの興味を絶やさず、理解しあったうえで尊重しあい調和している。
我々のなかに、異なるものを排除する、といった気質をまったく持たないと胸を張って言える者がいるだろうか。グローバル社会に参入していく、ということは異質なもの同士の中で個を主張しつつもかき乱さずに調和をとっていくことと同義であるだろう。そのためにはまず、日本人としてのアイデンティティや、他への興味、積極性を個々人が養っていかねばならないだろう。
一歩海外へ踏み出すだけで、自分の目指す医師像に近づき、グローバルな視点を持った日本人医師として働いていくためには、これだけの課題があるということを実感した。
ただただ机上の空論で海外について調べて知った気になることと、実際に足を踏み入れ空気を体感して人々と触れ合うことは大きく異なっている。私が自分の不足分を実感するのに至るまでには、マレーシアで出会い、触れ合った数多くの人々は誰一人として欠かせなかった。この経験を無駄にせず、これから必要だと考えたことを肝に銘じてこれからの生活を送っていきたい。
こうした機会を与えてくださった人々や、現地でであった友人たち、手厚く出迎えてくださったカレッジの人々には心からの謝意を伝えたい。本当にありがとうございました。
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(順不同/敬称略)