参加学生レポート

ペナン春期学校2016

明治大学 情報コミュニケーション学部
情報コミュニケーション学科 2年 望月 一甫

<海外に行きたいという強い願望から>

ジョージタウンにあるモスク

2月28日早朝、初めてマレーシアの地を踏んだ。まだ暗い外を見ながら、空港で乗り換え便を待つ。緊張と同時に気持ちは高ぶっていた。
 そもそもこのプログラムに参加したのは、率直に言えば海外に行きたいという自身の強い願望からであった。昨年の9月に参加した文科省のSENDというプログラムで自分の海外に対する価値観が大きく変わり、じっとしていられなくなった。一方で、そのような自分とは裏腹に、単純な志願理由ゆえに、候補者の選考面接で恥をかくのではないかと考え、締め切り直前まで応募をためらっていた自分もいた。

たくさんの花に囲まれた植物園で
 出発前の自分のマレーシアに対するイメージは、地理的に暑い地域に位置しており、事前研修で教わった少々の知識のみであり、とても漠然としていた。また、今回の主な訪問先が首都クアラルンプールから国内線でさらに一時間のところにあるペナン島ということもあり、なかなか自分で情報を集めることもできなかったということもあった。
 しかし、このプログラムに参加して、実際にマレーシアについて学ぶことができ、本当によかったと思っている。

<マレーシアの大学で>

ペナンヒルへはこの綺麗な鉄道を使って登ります
 10日間のプログラムのなかで、6つの大学、カレッジを訪れ各大学独自の英語プログラムを受けた。その期間は、それぞれの大学の寮に滞在した。その後、2日間という短い期間ではあったが、現地の方の家庭にホームステイをさせていただいた。
 それぞれの大学でのプログラムは、どれも日本の教育システムとはかけ離れた、堅苦しくない自由な雰囲気のもので、非常に興味を持てるものであった。例えばグループワークを通じた授業では、学生自身が行うアクティビティを中心に学習の本質に迫っていく、日本では行われないような、学生の興味を掻き立てながら楽しく学べる授業であった。どの大学でも、学生がのびのびと過ごしている印象が非常に強く、そこに海外の大学で学ぶ意義があると感じた。それぞれの大学で学んだことは、英語のみでなく普段の生活においても大切なことであり、本当に内容の濃いものだった。

<ホームステイ>

ペナン中心部は無料バスで移動可能です
 ホームステイでは、一人暮らしのおばあさんの家に泊まらせていただいた。このホームステイ先のおばあさんは、英語が話すことができなかったためコミュニケーションには非常に苦労したが、一緒に宿泊してくれたマレー語が話せる中国人や韓国人の学生の支えもあり、何とか乗り越えることができた。そのおばあさんに日本の金平糖をあげたときの優しい笑顔と“サンキュー”という言葉がとても印象的で、今となっては貴重な経験になった。
 そして、ペナンという地域は、多文化が協調しあって作られているところだと強く感じることができた。グローバル化という流れのなかで何かに一本化されることなく、あくまで個々人が尊重されていると感じた。

<他宗教が共存する景観>

海にかかる橋。懐かしい感じもします
 宗教的な面では、世界遺産であるジョージタウンという同じ地域にさまざまな建物が建てられており、異様な雰囲気を醸し出しているのが事実である。イスラム教のモスクがあれば、そのすぐ近くに中国系のお寺がある。リトルインディアという小さな区域には、インド系の商店やレストランが集まっている。ジョージタウンでなくとも、観光名所である極楽寺は、ペナン随一の仏教寺院であり、中国・タイ王国・ビルマ式の3様式の建物が隣り合って建てられており、ペナンを象徴する建物である。また、壮大な景色を楽しむことができるペナンヒルの頂上付近にも、モスクや中国系の寺院、そしてヒンドゥー系の寺院が建てられており、観光客向けの建物が多く存在するなかで、地元の人々にも受け入れられる作りが特徴的になっている。
 また、食事にも一定の配慮がある。ハンバーガー店に豚肉を使った商品がないのに加え、多くの国や地域からの労働者を受け入れている日本企業の食堂が、イスラム系とその他という形で大きく二分化されているのが主な例である。

<成長するマレーシアがかかえる問題点>

現地の障害者施設を訪れました
 ASEANの一員であるマレーシアは今、成長の一途をたどっている。2020年までに、先進国入りをすることを目標としている中で、他の同じような状況にあるアジアの国々と同様に、様々な問題点が存在するのも事実である。
 例えば、交通システムの改善である。ペナンは、島といえどもマレーシアでも主要な都市であり人口も多い。そして、中心部が非常に狭い範囲に集まっているため、朝や夕方の交通渋滞は慢性的であった。主要な交差点では、係員が信号に代わって合図をしていた。しかし、他のアジアの国と違いバイクの交通量は少ない。車の利用が進み、バスやトラックの交通量が比較的多かったのは、多くの市民が経済成長の恩恵を受けている証拠であると感じた。
現地の大学生はとても元気で気さく!
 現地の学生の話によれば、マレーシアでは車の価格が安くかつ税金が優遇されて、市民にとって車が手に入りやすいという事情が背景にあるという。私たちが訪れた大学と泊まっていた寮との間の送迎が、それぞれの大学が所有しているバンやバスであったことや、多くの道路で車の駐車スペースが確保されていることからも、ペナンの市民の生活にとって車が重要な役割を果たしていることは容易に理解できる。しかし、街中を走る車やトラックは、中古車の比率が非常に高いと感じた。
 電気の使い方にも疑問がある。他の成長過程の国とは違い、マレーシアは多くの建物でエアコン完備であるため、屋内では快適に過ごすことができるが、エアコンの感覚が日本人と違うのか非常に寒く感じる。マレーシアが近い将来、地球温暖化の問題に直面した際に、人々がエアコンの使い方についてどう考えるのか注目したい。先ほど示した中古車についても、同じことがいえる。中古車は排ガスの量が多いため環境によくないが、それが車の所持率の減少につながらないかが心配である。

<親日的な人々>

現地の方々は皆優しかった!
 ほとんどの東南アジアの国に当てはまることであるが、マレーシアに住む人々は、出身地にかかわらず非常に親日的である。屋台や商店街に行くと、多くの人が片言の日本語で自然に話しかけてくる。現地で知り合った学生の中にも日本語を話せる人がおり、現地の人々がいかに日本に対して興味・関心を抱いているのかを知ることができた。また、ペナンはリゾート地としての観光客向けの顔だけではなく、日本人が老後に過ごす地域として広く知られている。日本人と現地の人々の双方が、それぞれの国によい印象を持っているといえるだろう。

<終わりに>
 この「ペナン春期学校2016」を通じて一番強く感じたこと。それは、さまざまな人とのつながりである。このプログラムに参加していた日本からの大学生は、みな大学や住んでいる場所も違くい、個々がそれぞれのバックグラウンドを持っている。そして、出会ったマレーシアの人々は、同世代であっても日本人とは違う習慣を持っている。やはり、自分の目で見て話さないとわからないことも多く、自分の見識を高めるためにもさまざまな人々とのコミュニケーションは大切であると思う。
 これまで述べてきたとおり、英語の研修がメインのプログラムであっても、それ以外の分野でさまざまなことに気づき学ぶことができたことは、自分にとって大きなプラス点であり、このような機会を与えてくれたマレーシア政府観光局の方や、現地で出会ったすべての人々に感謝している。マレーシアと日本の結びつきがさらに強くなることを願うと同時に、自分もマレーシアに対する見識をさらに深めていきたいと思う。



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