派遣生レポート

近畿大学 経営学部 キャリア・マネジメント学科
岡田 拓久

~はじめに~

私が今回LMPに参加しようと思った理由が3つあります。まず1つ目に「神秘的な東南アジアの多民族国家に触れたい」。2つ目に「世界に目を向けた刺激的な同世代の仲間と出会える」。そして3つ目に「就職活動前の最後の夏休みに海外で活躍する方々と交流したい」ということです。
 この3週間で日本全国からバックグラウンドが全く異なる同世代の仲間と学び合えたことは今後一生ものの経験となりました。関東10名、関西6名で構成されたメンバーでは東京の事前研修で1度しか顔合わせをしたことがなかったので、それぞれ強烈な個性を持った考え方も違う仲間と共に上手く関係を築けるかという不安も正直なところありました。しかしマレーシアにつくと最初の1週間でメンバーそれぞれの積極的な姿勢に当初の不安は自然となくなりました。
 プログラムに参加する前はマレーシアという国に対して「東南アジアなのでご飯がおいしそう」、「自然が豊かでチンパンジーが有名」、そして「多民族国家なので色んな言語が飛び交っているのかなぁ」という漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかし実際に現地に行って以来この概念は大きく崩されました。「同じアジアなのにも関わらずこんなにもイメージが違うのか。ここまで新しい世界観が広がっているのか」と自分の中に存在したアジアへの既成概念のようなものが完全に打ち砕かれ、新しいマレーシアが見えました。個人的には海外渡航は初めてではなく、アメリカ、メキシコ、隣国の中国へと訪れたことがありましたが、東南アジアに位置するマレーシアにはあらゆる人種や言語が飛び交っており、非常に他国と関わりの強いエキゾチックなアジアを経験することができました。「マレーシアで何を学んだか」をひと言で表現するのは難しいですが、3週間のマレーシアでの生活を通して得た最も印象に残っているものを取り上げていきたいと思います。

~ホームステイを通じて知るマレーシア~

現地でホームステイを3日間経験しました。その日はマレーシアでイスラム教の断食明け大祭の日で『オープンハウス』と言われる習慣があり、ムスリムの民族衣装を着て自分の家を開放し、一日中親戚や知人や見ず知らずの他人までも招待して食事を振る舞いお祝いします。私もホームステイ先の家族に同行してマレーシアの方の家々をいくつか訪問しました。私たち日本人の考えからすれば、パーティーというものは招待された者だけが参加できるものですが、この行事では見知らぬ人も自由に他人の自宅に入って料理まで頂けるとは、マレーシアならではのユニークな習慣だと思いました。そこで目にしたのは更にマレーシアならではの光景です。たくさんの方々が同じテーブルで楽しそうに談笑しているのですが、その方々が飲んでいたものは、なんと決まってジュースか砂糖のたくさん入ったコーヒーでした。日本人からすれば大人が集まって楽しそうに会話する時にはお酒はつきものですが、これはイスラム教の行事ということでアルコールはありませんでした!

マレーシアでは食事を手で食べるというのが一般的で、オープンハウスでも器用に手を使ってご飯を食べる方が多かったです。そこで私も「上手くマレーシア式にご飯を食べてみたい!」と思い、挑戦してみました。しかし、これが意外と難しく、指で思うようにご飯をすくえないのです。見た感じは簡単そうなのですが、実際にやってみると口に運ぶ前にこぼれて上手くいきません。外国人が初めて日本のお箸を使って食事をする時こんな感覚になるのではないでしょうか。それからマレーシアの方々に指を上手く使ってご飯を食べる方法を教えていただくと、何度も試しているうちに掴み方のコツみたいなのを理解して日に日に上達しました。海外に訪れると食事が違えば、食べ方も違う。このオープンハウスではマレーシアの方々が日常食するものに触れることができました。

~イスラムならではの世界観~

またイスラム教の方々と生活することによって、普段日本で暮らしていて深く考えることがなかった宗教というものを意識するようになりました。マレー系の民族衣装を来た女性とお会いした時に反射的にいつものように右手を差し出して握手を求めようとしました。しかし、そこにいた方々は誰一人として手を差し出そうとしませんでした。そしてすぐさま思い出したのですが、イスラム教徒の多いマレーシアでは一般的に初対面の男性と女性が握手するのはタブーとされているので、これも気をつけないといけない点だと感じました。

滞在中のあるとき、突然どこからか大音量のアラビア語が流れてくるのを聞きました。一体これから何が始まるのか、戸惑いとても驚きました。これはマレーシアに多数あるモスクから1日に5回ある礼拝時間に「アザーン」と呼ばれる呼び掛けが流れてくるのだと後から知りました。これも異国情緒あふれるイスラム世界ならではのものでした。このようにイスラムの世界ではたくさんの決まりがありますが、私はイスラム教を信仰するマレーシアの人々は行動も考え方もとても洗練されていると感じました。宗教を軸として、あらゆる規律や規則を守り抜いて人生を全うしていく姿や人生観は私たち日本人にはないものです。マレーシアには大きく分けてマレー系、中華系、インド系の多民族が混合していますが、これだけ言語も宗教も違う人種が一国に集中しながら共存共栄している現実を見て、マレーシア国民それぞれがお互いの民族性の違いを許容できる寛大な心を持っているのだと思いました。

~大学での2週間~

私たちはマレーシアのIUKL大学に2週間お世話になりました。そこでは英語でマレーシア文化について学んだり、マレーシアで日本のどんな商品が売れるかというプレゼンをしたり、現地の大学生と交流したりしました。ここでは先生が一方的に生徒に話して授業を進めていくという日本式ではなく、講義に参加している学生もどんどん積極的に発言して生徒と先生が一体となって話を展開させていくスタイルでした。先生が議題を一つ取り上げると生徒にも質問をして、全員参加型のとてもエキサイティングな雰囲気の中で授業を受けることができました。日本では生徒が講義中に積極的に発言をして、教室にいるみんなと意見交換をするという機会が乏しい現実があります。良く言えば協調性がある、人と穏便に話を済ませるフォロワー的な考え方が定着しているという見方もできますが、反面、今までの既成概念が壊せずに新しいアイデアが生まれにくいのではないでしょうか。この点においてまだまだ日本人に足りないものは、人前でも物怖じせず自分の考えを相手にしっかり伝える自己主張だと思います。私たちの世代はより一層グローバル化に向かう時代に生きる上で、未だ見ぬ新たなモノも積極的に取り入れて行けるような柔軟性も必要になってくるかもしれません。

ところで、現地の大学生の交流もとてもよい経験となりました。主にIKLUの学生とはアクティビティで知り合いました。一番印象に残っているのはCultural Nightです。
 このイベントではマレーシアと日本のお互いの文化をパフォーマンスを含めて紹介し合うといったものです。私達は書道、武道、茶道、日本スタイルのファッションショー、ソーラン節、きゃりーぱみゅぱみゅのダンスを披露しました。全体構成に従って16名のメンバー全員がそれぞれの役割を果たし、現地の方と一緒に盛り上がった時は大きな喜びを感じました。やはり自分たちの造り上げたものが海を越え、言語の壁を乗り越え海外の人々に受け入れてもらえるというのはとても感動的なものです。これも素晴らしいメンバーがそれぞれ協力したからこそ出来たのだと思っております。その後の写真撮影会でもマレーシアの人々とたくさんお話しましたが、日本に対して友好的な質問を受けたり、写真を取られたり、どこか馴染み深い奥床しさを感じました。

~世界に目を向けること~

マレーシアの方々との交流を通して大きく学べたこともあります。マレーシアの人々は自国の価値観や文化に揺るぎない満足感と自信を持ちつつ、常に世界に目を向け、グローバルな人材を育てています。それはマレーシア独自の文化を保ちつつも、様々な民族と調和し合う国民性に根差しているのです。。私個人の意見として日本はまだまだ既存のものだけを保ち続けようとする姿勢が強い国であり、「何か新しい得体の知れないものは危ない」といったような、保守的な考えを持っている人が多いのではないでしょうか。もちろん日本の文化や価値観を軽視しているわけではありません。私たち日本人もマレーシアにならって日本独自の伝統、文化を維持しつつも世界各国からの文化を受け入れることが重要だと感じるようになったのです。
 東京オリンピックも決まり、日本にもますます国際化の波が押し寄せてきます。このことが一層グローバル化の転機となり、世界全体がますます小さく感じられる時代になってきました。いまこそ世界有数の経済大国に生きる日本人が外の世界にも目を向けて、日本を、そして世界をもっと元気にしていく時だと思います。

最後になりましたが今回のマレーシアプログラムでお世話になった主催・後援団体の方々をはじめ、3週間大きな影響力を与えてもらえた最高のメンバー15名に感謝したいです。ありがとうございました。