派遣生レポート

マレーシアを経て

九州工業大学 工学部 機械知能工学科
三浦 俊輔

私の将来の目標は、グローバルなエンジニアとなることです。そして、様々な国の人々と出会い、語り合い、ものづくりをしたいと思っています。ルックマレーシアプログラムに参加した理由も、その経験が目標の実現につながると考えたからでした。

今日では、「グローバル人材」という言葉をしきりに耳にしますが、多くの人がこの言葉から「英語が話せる人材」を連想するのではないかと思います。もちろんグローバル人材に英語力は必要不可欠ですが、同時に異なる文化や考え方に対する理解や寛容さも重要です。私がこのプログラムから得られる経験として期待したのは、マレーシアおよびイスラム教の文化や人々の考え方を知ることでした。以下にいくつかその例を紹介します。

マレーシアはイスラム教徒が人口の6割を占めるイスラム教国です。そのため、他国のムスリムにとっても生活がしやすい環境となっており、私たちが短期留学をしていたIUKLにもアフリカや西アジアから多くの学生が留学していました。このIUKLに在学する様々な国からのイスラム教徒と交流を深める中で私が驚いたのは、ひとえにイスラム教徒と言ってもその信仰の程度には個人差があり、また出身国によっても違いがあるということでした。私が出会ったマレー系のマレーシア人のほとんどは、ハラールでない食品を口にせず、お酒も決して口にすることがないという、僕がイメージする通りのイスラム教徒でした。しかし、一部のマレー人や他国から留学しているムスリムの中には、イスラム教徒としては好ましくないのですが、お酒を飲む人やハラールでない食品でも食べるという者もいました。後になって考えてみれば、ルールを守る人間と守らない人間がいるように、信仰に熱心な者とそうでない者がいることはさほど不思議な話ではないのかもしれません。しかしながら、イスラム教徒は例外なく熱心にイスラム教を信仰するものなのだろう、と思い込んでいた私にとってこの事実はとても衝撃的でした。私が籍を置く九州工業大学もさまざまな国から留学生を受け入れており、その中にはイスラム教を信仰する学生もいます。これから彼らとかかわる際には、イスラム教徒として一括りで考えるのではなく、彼ら一人一人の考え方を尊重するように心がけようと思いました。

また、マレーシア人の明るくフレンドリーな民族性にも驚きました。私は以前、アメリカで短期語学留学をした経験があるのですが、その時もっともショックを受けたのは、ファストフード店やスーパーなどで働く従業員の業務態度の悪さでした。あるハンバーガーチェーン店では商品を注文するためにレジへと向かうと、店員はカウンターに置いた自身の携帯電話で音楽を流し、鼻歌を歌いながらフライドポテトをつまんでいて、客への対応はとても無愛想、ということも珍しくはありませんでした。そのことに最初こそ衝撃を受けたのですが、アメリカ人の友人と話しているときにはとてもフレンドリーだと感じましたし、日本の業務態度が特別勤勉なだけなのだと思うようになりました。このプログラムに参加する前は、マレーシアに対する印象もアメリカと同様でした。しかし実際にマレーシアに滞在していると、その考えがまちがっていたことに気がつきました。
 友人として交流する際にも、現地の学生が個人で車を用意し、マレーシアの料理や文化を紹介するために色々な場所に連れて行っていただいて、私たち一同、そのホスピタリティーに感動しました。

アメリカで感じたような友人としての優しさだけでなく、どのお店に行っても、従業員はとても明るく振る舞っていて、非常に好感が持てました。民族性というのは個人や友人として交流をしていても表面上は気づきにくく、現地で働く他人と接する時こそ、顕著に表れるのではないかと感じました。そういった点でも、日本にいる留学生との交流では得られない、貴重な経験ができたと思います。

マレーシアは語学留学をするのにも他国と比べ様々な利点があると思います。語学留学というと、アメリカやカナダ、イギリスなど欧米への留学をイメージしがちですが、実際に欧米へ留学をしてみると、自分の周囲に思いのほか日本人が多いということに気がつきます。そこで日本人だけでコミュニティを作ってしまい、あまり英語を使う機会がなかった、という話もちらほら耳にします。最近では安価で良質な授業を受けられることから、フィリピンなど東南アジアへの語学留学も注目されていますが、なぜかマレーシアへ目を向けられることは少なく、日本語を一切使えない環境に身を置き英語漬けの生活を送りたい方には、マレーシアは大変お勧めです。またクアラルンプール市内やその周辺では、屋台での食事やタクシーを利用して郊外に出かける際にも英語でコミュニケーションをとることができ安心です。

安心と言えば、私はこのプログラムに参加する以前は、マレーシアの食事に関して楽しみに思う反面、不安もありました。東南アジアには辛い料理が多いイメージがあったからです。そこで、マレーシアの食事についても少し言及しておこうと思います。

また、イスラム教国ということで、当初はマレーシアで豚肉を食べる機会はないと思っていました。さすがにマレー系の人が食事をとるような場所では見かけることはありませんでしたが、現地の学生に連れて行ってもらった中華街などでは普通に豚肉を含む料理が出されていました。売り場は完全に隔離されていますが、大型スーパーなどではハラールでない製品を購入することも可能です。

マレーシアは多民族国家です。マレー系、中国系、インド系が大部分を占め、他にもさまざまな民族が生活しています。そのため、それらの民族の本格的な伝統料理はもちろん、それぞれの料理が組み合わさった新しい料理を楽しむことができます。私の場合は、自分が思っていたよりも辛さに対する耐性があったようで、辛すぎて食べられないということはありませんでした。辛い物が苦手な方でも、マレーシアには西洋料理や日本料理のお店も多数存在するので、食事に関して困ることはないと思います。

また、イスラム教国ということで、当初はマレーシアで豚肉を食べる機会はないと思っていました。さすがにマレー系の人が食事をとるような場所では見かけることはありませんでしたが、現地の学生に連れて行ってもらった中華街などでは普通に豚肉を含む料理が出されていました。売り場は完全に隔離されていますが、大型スーパーなどではハラールでない製品を購入することも可能です。

マレーシアでの滞在中で最も印象に残っている出来事といえばやはり、企業訪問でもお世話になったDreamEDGE社のCEO、Adriさんに招待していただいたショーケースで、マハティール元首相にお会いできたことでした。このショーケースへの参加は、もともとこのルックマレーシアプログラムの予定にはなく、Adriさんのご厚意や周囲の方々の協力があったからこそ実現したものでした。思い返してみれば、マレーシアで過ごした約3週間、無駄に過ごした時間は1秒たりともありませんでした。ただただ充実の毎日で、参加する学生に少しでも多くの経験をさせたい、という思いがこのプログラムには込められているのだと、しみじみ感じました。

最後になりましたが、マレーシア政府観光局の徳永さんとヌルルさんを始め、このプログラムに関わったすべての人に感謝いたします。優秀なエンジニアになれるよう日々研鑽し、いつかマレーシアに恩を返したいと思います。
 そして、このプログラムに参加した他のメンバーに向けて。みんなと出会えたことは、このプログラムを通して得られたものの中でも、特に貴重なものでした。地方の単科大学に通う僕にとって、大学や専門の異なるみんなとの会話はとても刺激的で、自分の視野が拡げられていく感覚にいつもワクワクしていました。ともに過ごした3週間は一生忘れないと思います。

本当にありがとう。これからもよろしく。