派遣生レポート

ルックマレーシアプログラムを終えて

立教大学 経営学部 経営学科
菅野 詩絵

~はじめに~

ルックマレーシアプログラム(LMP)では多くの出会いと発見に恵まれ、将来に繋がる様々な経験ができました。このレポートでは、ホームステイでの異文化体験、新たな視点から見るマレーシア、私がLMPに応募した動機の一つであるマレーシアの多民族、多文化性についてと、今後に向けてという4つの柱について書きます。

~ホームステイでの異文化体験~

 2日目の午後はイスラム教の結婚式に連れて行ってもらい、ホストマザーにいただいたマレーシアの正装をして行きました。驚いたのは、イスラム教の結婚式はイスラム教徒なら新郎新婦の知り合いでなくても入れるということです。体育館のような会場で式が行われており、出入り自由な様子からもわかるように日本よりも自由な雰囲気で、日本の結婚式ほど、会場の一体感といったようなものはあまりないように感じました。
 結婚式の後は、ホストマザーの叔父の家庭に連れて行ってもらいました。ホストファミリーいわく、ハリラヤの期間は親戚みんなで集まるとのことでした。ハリラヤとは、イスラム教の断食明けの約1か月間を指します。この1か月間はお祭りの期間だそうで、オープンハウスへの訪問や親戚の家に皆で集まることなどが多いそうです。続々とホストファミリーの親戚の大家族も集まり、私が大家族の多さに驚いていると、ホストマザーがマレーシアでは子供が4~6人いるのが一般的なんだよ、と説明してくれました。集まった後は、皆でマレーシアのお菓子を食べたり、ホストマザーの叔父が作ってくれたテ・タレというマレーシアのミルクティーを飲んだりしました。また、日本のお年玉のように子供にはおこづかいをあげており、日本のお盆やお正月と似ている部分があると感じました。ホストマザーの親戚はインド系の方が多く、最初は皆でマレー語を話していると思いきや、次の瞬間にはタミル語が飛び交っていたり、私と話すときは英語で話してくれたり、ホストマザーが日本語とマレー語の通訳をしてくれたりといったように多くの言語が飛び交っており、マレーシアの方は多言語が話せるということをここでも実感しました。

~企業訪問を通して見えた、新たな視点から見るマレーシア~

私がLMPに応募した一番の動機は、マレーシアの多民族、多文化性を肌で感じたいということでしたが、それに加え、現地での企業訪問を通してほかの観点からもマレーシアを見てみたいという思いが芽生えました。ほかの観点とは、特に都市部と地方で経済格差が広がってきているということと、人材教育についてです。
 経済格差については、企業訪問や大使館訪問のときにジニ係数について聞いたことから関心を持ちました。今回は地方の生活の様子を間近で見ることができなかったので、都市部と地方を比べることはできませんでした。しかし、ホテルの近くを歩いていると華やかな市内の影で路上では物乞いをしている人を見かけました。少しではありますが経済格差の様子を見た気がしました。先進国入りを目指すマレーシアにとって、経済格差の解消は避けられない問題となるでしょう。今後マレーシアが先進国入りを目指す中でどのように経済格差の問題を解決していくのか注目したいです。そして次回マレーシアに行くときは、地方の生活の様子も見たいと思います。

2点目の人材教育に着目した理由は、訪問先の企業で、従業員教育をしても教育後すぐにやめてしまう人が多いというお話や、人材育成についても日本から学びたいと思っているとのお話を聞いたからです。従業員が短い期間で辞めてしまうことについては、多民族であるがゆえに教育方法が難しいのではないかということや、国民性、雇用環境など様々な要因が絡んでいると思いますが、訪問先のお話を聞いて日本の人材教育は優れているのではないかということに気づけました。とはいえ、日本人が一つの会社で長く務めるということに関しては、人材教育だけでなく日本の雇用慣行や職場環境なども関係してくるでしょう。なぜマレーシアでは仕事をすぐに辞めてしまう人が多いのか、マレーシアと比べ日本の人材教育のどのような点が優れているのかといったことに関して、3週間の滞在では明らかにできない部分も多々あったので、日本の人材教育とマレーシアの人材教育の両者について、今後詳しく調べようと思います。

~マレーシアで感じた多民族、多文化性~

私がマレーシアの多民族、多文化性を感じた場面は、主に食事と民族音楽、民族舞踊の鑑賞とクアラルンプール(KL)観光と大学生活の時でした。
 まず食事について。マレーシアには実に様々な民族料理があると感じました。マレー料理、中華料理、マレー風中国料理のニョニャ料理、インド料理などです。日本ではなかなか食べられない、馴染みのない食事も多く、食べることが好きな私にとっては非常に楽しく新鮮でした。私の大学の近くにマレー料理屋があるので、マレーシアの味を思い出したくなったら食べに行こうと思います。
 次に民族音楽、民族舞踊について。マレーシアでは民族音楽や舞踊を見られる機会が多く、この2つからも多文化性を感じることができました。見たことのない様々な楽器が使われていただけでなく、舞踊に合わせる音楽や衣装も舞踊の種類によって異なっており、民族音楽や舞踊の種類が非常に多いと感じました。

次にKL観光について。KL内での自由行動の時は、よくマレーシア政府観光局のラーマンさんに案内をしていただきました。ラーマンさんは、マレーシアについての話や、近隣の国から出稼ぎに来ている人についての話もしてくれました。その数は私の予想よりも多かったです。また、市内を歩いているときにラーマンさんが、あの人はバングラデシュの人だよ、あの人はカンボジアの人だよ、などと、容姿を見てすれ違う人の出身国を教えてくれました。すれ違う人たちの中には様々な国籍の人がおり、その時にもマレーシアの多民族性を間近で感じることができました。
 私たちは9月1日からInfrastructure University(IUKL)の大学寮で約2週間過ごし授業を受けました。大学生活でも、マレーシア出身の学生だけでなく、近隣の国や中東やアフリカから来ている学生など様々な民族の人を見かけました。IUKLの学生も多言語を話せるということが印象的で、多言語が飛び交う時、私はいつもマレーシアの多民族性を感じていました。初回の授業の終盤では、私たちの質問に答えていただける時間があり、その先生のお話の中で、マレーシアでは子供の時からそれぞれの宗教について教わり、人々はお互いの宗教をリスペクトしているというお話がありました。また、人々は人種や宗教や言語のちがいを認め、受け入れ、互いに尊重していると話されていました。このことは、マレーシアが多文化、多民族国家を保てている秘訣の一つではないかと感じます。

~今後に向けて~

LMPで刺激的な3週間を過ごした私は、日本の良さ、アジアについてなど、様々なことに目を向けたいと思うようになりました。
 まず日本について。企業訪問や日本文化紹介やマレーシア滞在を通して日本を客観視できたことで、日本の良さに気づくことができました。また、マレーシアに行ってからしばしば感じたこととして、自分が日本のことを意外と知らなかったという点が挙げられます。自分が日本のことをもっと知っていれば、交流した学生と互いの国についてより深く話せただろうと何度も思いました。マレーシアに行って、日本の良さや日本に関する知識の少なさに気づき、改めて自国を見つめ直そうと決めました。
 次にアジアについて。クアラルンプールで感じた、都市と発展途上の街並みが混在している様子は私にとって魅力的でした。発展途上の国が多いアジアでは、マレーシアのように発達した都市と発展の中途にあるものが混在した様子や、近年の日本ではあまり感じることのできない国の勢いのようなものを感じられるのではないかと思います。日本が忘れかけていたとも言える国の勢いを感じるべく、アジアに目を向けたいという思いはより強くなりました。

次に自分の無知について。マレーシアで新たな発見があるたび、自分の知識の少なさにも気づかされました。加えて、一緒に参加したメンバーが皆勉強熱心で知識が豊富だったことも自分の無知を痛感するきっかけになり、私ももっと勉強したい、勉強しなければいけない、と身が引き締まりました。話をする中でメンバーのそれぞれの専攻分野にも興味がわきました。
 そして将来の進路について。LMPを通し日本を客観視できたことがきっかけで、将来やりたい仕事が徐々に見えてきました。また、マレーシアで感じることができた多民族性、多文化性は非常に興味深く、これらを再度感じるために、また、改めて日本を客観視するためにも、機会があればぜひ留学したいです。
 様々なことに目を向けるための契機を、LMPを通してたくさん得ることができました。このきっかけを今後に繋げることが大切であるということを心に留め、将来に生かしていきます。

最後に、マレーシア政府観光局、関係者の皆様にLMPという素晴らしい機会をいただいたこと、感謝申し上げます。ありがとうございました。