私とマレーシア

田谷圭佑(東京都市大学)

国立モスクイスラム教の礼拝堂、きれいで立派な建物で目を引かれる。

 このプログラムに参加する前まで、僕自身が、マレーシアと言われて連想したものは、KL(クアラルンプール)やマラッカなどの地名と教科書に書いてあった熱帯雨林があるということぐらいで、当然のことながら建造物やマレーシアの国民性、文化、言語などはほとんど無知の状態でした。きっと、マレーシアと言われてイメージできる人があまり多くいないのではないでしょうか。それと対比して日本と言われれば、日本食だったり、京都や浅草、ディズニーランドだったりと、きっと多くの外国人がイメージできるはずです。

 しかし、マレーシアはなんと外国人訪問者数ランキングは世界9位(JNTO 2010のランキングより)。その一方で、日本は30位と低迷、訪問者数にすると約3倍の差をつけられています。そんな世界の人々を魅了しているマレーシアという国は一体どんな国なのか、ということについて焦点を当て、今回のプログラムに臨みました。そして、3週間過ごした結果、マレーシアの2つの特徴を発見しました。

 1つ目の特徴は、”融合された国”ということです。その理由として、東南アジアの国というと、シンガポール以外はまだまだ発展途上国という認識が強かったのですが、実際行ってみるとものすごい経済成長を遂げていて、その概念は一気に覆されました。例えば、高層ビルがいくつも建ち並び、住居もすごくきれいで、KL市内はインフラも整っています。その一方で、屋台街や市場、物価の安さなど、東南アジアらしい部分も多く兼ね備えていて、ジャングルやリゾートもあり、それらが融合されています。日本人の中には、衛生面がネックで、タイ、ベトナム、カンボジアなどの渡航を躊躇する人は結構いるはずですが、そんな人にとって、マレーシアは非常に行きやすく、気持ちの面で滞在しやすい国だと思います。マレーシア1つの国に、いくつもの顔をもっているのが、魅力の1つであると感じました。

マラッカかつて港町として栄えていた歴史的な街、西洋や中国の建築が混合されていて世界遺産にも登録されている。

 2つ目の特徴は、”グローバルな国”ということです。マレーシアには、さまざまな人種が共存しています。そもそもマレーシア人はマレー系、中華系、インド系、その他の民族から構成されていて、そこにさらにいろんな国の観光客や労働者がいます。ショッピングモールのフードコートは特に顕著に表れている場所で、様々な国のお店があり、そこで食している人や働く人も様々な人種の人がいます。宗教の面でも、マレーシア人は大きく分けて、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教に分かれるが、それぞれの宗教の寺院が、すぐ近くにあります。

 この様な光景は日本では、見られない事だと思いますし、世界では宗教紛争が頻発する中で、宗教が調和している国というのは非常に稀な国じゃないかと思いました。それ故に、マレーシアという国でいくつもの文化や慣習を見ることができ、日本人の僕らが歩いていても、外国人扱いされないので、溶け込んで滞在することができます。コミュニケーションの面では、公用語はマレーシア語ですが、ほとんどのマレーシア人が英語を話し、外国人にも非常に慣れています。これらの部分が、マレーシアの最も魅了的な部分であるし、マレーシアを発展させている大きな要因なのではないかと、感じました。

 そして、この特徴をどうにか日本にも取り入れられないかと考えました。近年では、世界でグローバル化が非常に進んでいます。グローバル化に関して多くの問題も指摘されていますが、今後、よりアジア諸国の力が上がり、経済不振や少子高齢化、震災による被害や復興など多くの問題を抱える日本は、先進国としてのポジションを維持し続ける、もしくはさらなる発展をする、なにより日本人の外国人や異文化に対しての壁を打破するためにも、グローバル化は必要になると思います。

ナシレマッマレーシア料理で、至る所で食べられる。写真はホームステイ先の晩御飯、好みの量だけ取って、辛さも自分で調節できる。

 プログラム中、マレーシアの学生と交流する機会がありました。彼らのビジョンは、世界を見据えていて、留学したい、将来は海外で働きたい、英語以外にもいろんな言語を学びたいと考えていました。また、外国人である僕ら日本人に対しても非常に積極的にコミュニケーションを求めていました。対照的に、日本の学生はあまりこのような意識がないので、見習わなければいけないと思いました。それと同時に、いずれ彼らと同じフィールドに立つことになるかと思いますが、果たして対等に渡り合えるのかという不安も感じました。なので、日本の学生も日本社会がグローバル化されていくまで受け身になって待つという意識を変えて、よりアンテナを広げ、もっと海外に目を向けて、海外に対しての思考や興味・関心を持ち、積極的に行動しなければいけないと強く思います。

 また、今後の日本を担っていく僕らがアクションを起こすことで、少しずつ社会は変わり、そういったことの積み重ねと広がりが、日本全体のグローバル化にも繋がり、日本の未来を変えていくのではないかと僕は考えます。

 最後に僕自身の今後についても、少し書かせて頂きます。

 僕は、世界中の多くの人に日本に来てもらい、日本人も海外に行き、相互の国の人がより行き来ができるようなになれば、という理想を抱いています。その理由として、日本はすばらしい国だと思っているので、そのすばらしさを、世界中のたくさんの人に体感してもらいたいです。そのためにも、日本の観光産業がもっと頑張らなければいけないと思っています。日本の観光産業は本当に大きなポテンシャルを持ち、観光地として、北海道や小笠原の自然、大都会の東京、京都や鎌倉の歴史的な街、リゾートの沖縄、その他にもたくさんの場所があります。食のレベルやサービス精神も非常に高く、日本独特の文化や春夏秋冬の季節ごとの良さもあります。なので、日本はそのポテンシャルを生かせるようになれば、マレーシアのようにたくさんの外国人を呼び込むことができます。経済の面からしても、観光大国として大成できるので、今の日本の不況に対しての切り札に使えるはずです。

タマン・ネガラKLからバスで2時間と船で2時間のところにあるジャングル。野生のサル・イノシシ・水牛などがいる。トカゲやクモも都会とはサイズが違う。

 もうひとつの理由としては、僕は海外へは今年になって生まれて初めて行きました。その時に、その相手の国を肌で感じるとともに、初めて自分の国を客観視して、今まで日本にいるだけでは、気付かなかったこと、当たり前だと思っていたことがたくさんありました。それは、すごく些細なことから大きなことまで、たくさんあり、良い面は伸ばし、悪い面は改善しなければいけないと思いました。その感覚をたくさんの人に感じてもらいたいです。1人でも多くそういった感覚を持つ人が集まれば、日本をより良い国に変えることができるのではないかと思います。さらに、その現象が各国や地域で起これば世界全体がすばらしい方向に進むと信じています。

 しかし、プログラムで現実はそんなに甘くないと痛感させられたのも事実です。日本が好き、日本の文化に興味がある、しかし、日本に行きたいけど、どうしても金銭面で断念してしまう人に、何人も出会いました。そういう人たちと、人生で初めて間近で接することで、生きてきた中で1番の不平等さを感じました。もしかしたら一生掛かっても実現されないかもわかりませんが、世界を見るチャンスというのは、誰しもが平等に分配される世の中になればと思います。

 理想を実現するために、将来は、世界中をつなぐエアラインへの就職を考えています。就職後に、自分自身なにができるかは、まだ明確に分かっていませんが、必ず僕にも出来ることはあるはずです。そして、その時に今回のプログラムの経験も生きてくるはずでしょう。できることはそんなにないかもしれないし、小さなことかもしれませんが、自分も世界を変える1人になりたいと思います。最後まで、読んで頂きありがとうございました。

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