第3回若者トラベル研究会マレーシア海外研修リポート

マレーシア研修ツアーレポート

株式会社JTBコーポレートセールス
新宿第五事業部 小川 陽祐

1)はじめに

JATA(日本旅行業界)主催、マレーシア政府観光局協力にて『JATA若手トラベル研究会』に参加させていただいております。数度の意見交換会を経て、この度7/6~7/11に本研究の一環として「マレーシア研修ツアー」に参加して参りました。私は業務都合上、7/10帰国(7/9現地発)のスケジュールでございましたので、7/9までのレポートを下記に報告させて頂きます。
 本研究会の趣旨は、劇的に変化していく現代社会(オンライントラベルエージェント(OTA)の台頭やローコストキャリア(LCC)の進出など)の中で、この先旅行会社がどのように生き残っていけるのかを、現在危機的状況にあることを認識した上で、模索し、意見交換し、最終的に提言をする、といったものです。
 なぜマレーシアか。という問いには、本研究会がマレーシア政府観光局の協力のもと行われていることはもちろんですが、観光産業に非常に力と予算を投資している国であり、我々観光産業に従事する者が高価値と感じられる情報を得られるだろうという理由も挙げられます。今回はペナン、クアラルンプールの2都市を訪問しました。それぞれの地域での取り組み、課題、成功・失敗例などお話を聞くことができました。

ジョージタウンのストリートアート

2)訪問先レポート

2015年7月7日(火)
①Penang Heritage Tour

ペナン島の観光拠点、マレーシア第二の都市ジョージタウンを視察しました。街中にユニークでクオリティの高いアートが見られます。また、様々な宗教の寺院などが点在しており、宗教の融合を垣間見ることができます。

②Universiti Sains Malaysia

仏教系寺院

観光学部を持つ大学を訪問、教授にお話を伺いました。内容は主にマレーシアにおける観光業の歴史やこれまでの取り組み、現状、今後の課題についてです。マレーシアの保有する観光財産をどのように活用していくか、ホームステイの旅行商品企画のお話など大変参考になりました。外国人労働者が増えつつあるため、各施設でのホスピタリティの低下を心配されていました。これは日本でも同じことが言えると思います。
 またイスラム教徒を日本が迎え入れるにあたり、ハラル食の問題があるが、という問いについては、楽観的に「食材が明記されていれば避けて食べるので、過度な対応は必要ないのでは」と応えていらっしゃいました。もちろんご本人もイスラム教で、ラマダン中でした。
 最後に、OTAの台頭などについても言及され、旅行会社にとっては危機的状況であることは間違いないとのことでした。

ディスカッション風景

2015年7月8日(水)
①Penang Global Tourism & Penang Centre

ペナン観光局、教育関連旅行に関わる大学(専門学校)の職員の方々からのプレゼンテーションとディスカッション。世界遺産をツールとした観光局誘致戦略や、各種開催ベントの紹介を筆頭に、限られた空間で歴史、自然、都市、ビーチ、美味い食事が一度に体験できる素晴らしい都市だ、とペナンの熱いアピールを受けました。英語が通じるため教育旅行としても適していることもお話されていました。

②KDU College

観光産業に特化した大学(専門学校)。
 ホテルサービス、コックなどがカリキュラムとして組まれている。日本訪問時に直面したトラブルなどのお話を伺い、外国人旅行者が気持ちよく日本から帰国してもらい、再訪問を喚起させるようにするためには、国や地域の大きな機関の取り組みだけではなく、実際に旅行者と触れ合う日本人一人一人が意識する必要があると思いました。ただ並大抵のことでは出来ませんので、そのような意識を持つ人々を少しでも増やしていくことが、今後の課題とも言えそうです。



2015年7月9日(木)
①Halal Industry Development Corporation

ハラル製品展示

006年9月18日に設立され、マレーシアのハラル産業全体の発展に貢献している団体です。人工的にも世界的な産業に成長しているハラル産業への取り組みについて伺いました。
 グローバルなハラル製品のサプライチェーンを構築することが重要ということや、強大なビジネスチャンスが広がっていることなどを伺いました。

②Apple Vacations & Conventions Sdn. Bhd.

日本へのパッケージ旅行をメイン業務として行っている現地旅行会社です。日本語にて対応いただきました。最近日本への旅行者が劇的に増えており、チャーター便を飛ばすこともよくあるとのことです。
 ただ日本のインバウンド需要の拡大のため、ホテルが非常に取りにくくなって困っているとのことでした。MICE事業にも進出しており、他社とはサービス内容で差別化を図っているとのことです。

アップルバケーション社の応接室

  今後は、主要都市(東京、大阪、福岡、札幌)だけではなく、今までインバウンド旅行のディスティネーションになりにくかった地域に焦点を当て、企画を開発していく方針とのことです。



③Embassy of Japan in Kuala Lumpur

在クアラルンプール大使館に表敬訪問しました。貴重な体験ができました。
治安について、マレーシアは昨今安全性の高い国ではなくなってきており、ISに参加する若者なども増えてきているため、日本でのご案内には注意して欲<しいとのことでした。また、訪日観光客の増加についてのお話では、日本の受け入れが間に合っていない印象を受けているとのことです。実際に日本の受け入れ態勢が整っていないため、2014年だけで6便ものチャーター機が直前に欠航になる可能性が出て、対応に追われたとのことです。最後に、日本に限らず海外の若者にとって、英語も通じ、他宗教のマレーシアは異文化に触れる入り口としては最適の国ではないかとのお話がありました。

④Meeting with tour operators (JTB, HIS, SMI, JTA & J-Horizons)

マレーシアのランドオペレーターの方々と意見交換をし、下記のような情報、ご意見がありました。

  • クアラルンプールのISETANがCOOL JAPANより出資を受け、7月より改装に入る。
  • 様々な企業とのアポイントが取りやすい文化のため、TV(テクニカルビジット)のディスティネーションとしては最適。
  • 最近韓国からは、LCCを利用する団体が来ている。
  • 2015年度下期はASEAN会議の影響で混雑してきている。

2015年7月10日(金)
①Malaysia Convention & Exhibition Bureau
②Prince Court Medical Centre
③Putrajaya / Cyberjaya & Mitsui Outlet

7/10訪問の上記3施設については、不参加のため割愛させて頂きます。

3)まとめ

マレーシアは、ややもすると『東南アジアの国の中の一つ』と捉えられ、インドネシア、シンガポール、ベトナムやタイなどと同列で考えられてしまう傾向にあると思います。例えば、昨年インドネシアに行ってしまったら、マレーシアごと『東南アジア』の選択肢が消えてしまうことが、日本人旅行者の意識の中でも少なからずあると思います。そのような状況の中で様々な取組を行い、観光産業を発展させてきたパワーを今回目の当たりにし、圧倒されました。マレーシアに比べ、日本は島国ということもあり『東南アジア』と対等のポジションにいると思います。昨今観光産業に力を入れていますが、まだまだ新しい取り組み、発展の余地があることを感じました。そのためにも、観光産業に携わる我々が、先頭に立って考え、提言し、舵を取り、日本全体の発展に貢献することが必要と感じました。
 本研究は9/25の発表まで続きますが、まずは今回このようなマレーシア研修の場を提供してくださったJATAの皆様、マレーシア観光局の皆様、そして千葉千枝子様に感謝申し上げます。 以上

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