第3回若者トラベル研究会マレーシア海外研修リポート

TM & JATA Joint Fam Tour to Malaysia

株式会社小田急トラベル
東京外販営業部 新宿販売センター
日沖 貴博

昨今の日本の旅行業界を取り巻く課題の検証と、時代の変化に対応した新たなビジネスモデルを模索することを目的に、アジアの観光立国として成功しているマレーシアにおいて現地視察を行いました。
 マレーシアはかつて1981年にマハティール首相が 提唱した「ルック・イースト政策」(日本の近代化を手本として国民の教育を行い、意識を改革して、経済発展を促進しようとする近代化促進政策)によって様々な改革を行い、発展途上国から中進国まで上り詰めてきました。また、2020年までに先進国の仲間入りすることを目標とした「ビジョン2020」によって、現在もなお発展し続けています。このようなマレーシアが観光立国として成功した要因はどこにあるのでしょうか。今回の研修を通じて感じたことを紹介いたします。

Universiti Sains Malaysia(マレーシアサインズ大学)訪問

マレーシアサインズ大学での教授の話

観光学部で教鞭を取られているMr.Badaruddinからマレーシアが観光立国になるまでの歴史と成功した背景、そしてこれからの課題について話しを伺いました。
 マレーシアは政府の大きな政策展開により、ASEAN主要国の中で最も短期間のうちに農業国から工業国への転換に成功しました。工業化の成功によって中間所得層が拡大し、消費意欲も旺盛になり、それを目当てに海外から流通業やサービス業の進出が相次ぐようになりました。マレーシア政府は経済成長の牽引役として外資の活用にも積極で、2009年にはサービス産業の自由化を発表し、それまでの外資の資本規制を緩和しています。このように政府の姿勢や税制優遇処置によって多くの外資企業の呼び込みに成功したこの国では、人の交流が活発化し、より一層グローバルな人材が求められるようになりました。
 そもそもマレーシアはマレー系・中国系・インド系など、様々な国の文化や言語をあわせもつ人々が集まった多民族国家です。異なる言語が身近にある彼らにとっては、幼い頃からマレー語以外にも英語も学習しており、コミュニケーションの手段の一つとして2ヶ国語以上の言語を活用しています。また、海外からの留学生も積極的に受け入れているマレーシアには、世界各国から学生が集まってきています。このような環境で育った学生たちは、異なる文化の人と触れ合う機会が多く、異文化を理解し対応力を身に付けたグローバルな人材に育っていきます。そんな人材を多く抱えたマレーシアだからこそ、経済を成長させ観光立国として成功することが出来たのではないでしょうか。

Halal Industry Development Corporation(ハラール産業開発公社)訪問

ハラルについてのブローシャーの展示

Halal Industry Development Corporation(以下、HDCと記載)では、ハラールについて見聞を広めることができました。
 マレーシアは世界で唯一、政府機関がハラール認証を行っている国です。マレーシアハラール認証を取得した商品は、厳格な製造プロセスだけでなく、HACCPやGMPに準拠した衛生、安全基準を有しており、その基準品質の高さから世界中のイスラム圏で受け入れられています。HDCはマレーシアハラールのグローバル展開を目的に首相府直轄 企業として設立され、ハラール認証取得のための基礎研修からマレーシアを中心としたイスラム圏への海外進出支援まで幅広く企業をサポートし、安心・安全なマレーシアハラールの認知と浸透を行うべく、ハラール教育と貿易に主体をおいて活動しています。

ハラル製品の展示

そもそもハラールとはイスラム法において合法なもののことを言いますが、現在イスラム教徒の人口は全世界で16億人を超えており、彼らに関わるビジネスにはとても大きな需要があります。特に世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアやイスラム教を国教とするマレーシアを含めた東南アジア諸国の経済成長が著しいことから、成長する巨大な消費市場として期待されています。観光産業においてもイスラム圏は存在感を増しており、世界最大の国際観光消費国であるドイツの消費額を超える勢いとなっています。「イスラム観光」は観光産業における最大の未開発かつニッチな領域として注目を集めており、早々に対応を進めた国はムスリム観光客の旅行先に選ばれています。
 さて、日本の対応はどうでしょうか?アジア諸国の海外旅行熱が大きく高まってきており、その主流は相変わらず中国人であることは言うまでもありませんが、マレーシアやインドネシアからのインバウンドも順調に伸びてきております。ムスリム観光客が日本に到着して一番困難に感じることは「食」のハラール性、二番目に「礼拝施設」の有無だそうです。これらの不安を緩和できる設備を整えて迎え入れることができれば、もっとインバウンドの増加が見込めるのではないでしょうか。

最後に、このような研修の機会を与えてくださったマレーシア政府観光局と日本旅行業協会の方々、ご指導いただきました千葉様・鈴木様、マレーシアで関わってくださった方々、参加メンバー、これら全ての方に感謝申し上げます。

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