派遣生レポート

It's a small world

東京大学 教養学部 文科一類
佐々木 圭一郎

実は今回が、初めての海外経験。―小学生の時に、物心ついて初めて乗った飛行機が着陸時にちょっとしたトラブルに巻き込まれてから、飛行機が嫌いになった。飛行機の着陸ってこんな怖いものなのか。漠然とした恐怖感を覚え、それ以来飛行機を遠ざけていたのだが、高校2年生の修学旅行で再び飛行機に乗る機会がやってきてしまった。緊張、そして不安。そんな思いの中、実際に乗ったが、どうということもなかった。かつてのことは、たまたま運が悪かっただけとわかった。単なる思い過ごし。たった1度の不運ともいえる体験が、長い間自分の世界を狭めていたことに気がついた。

やがて素晴らしい人々との出会いもあり、世界を広げたいという思いが募っていった。そして、今年。受験勉強からも解放されて、やっと。―今回参加したルックマレーシアプログラムを知ったのは、大学の授業を通して偶然、政府観光局のホームページを見て。悩んだ。やはり、海外へ物凄く行ってみたかった。それに「マレーシアは素敵な国」と友人からも聞いていた。だが、初めての海外がマレーシアで大丈夫なのかという不安だけは拭えなかったから。海外に行ったことのない自分にとっては、まずは先進国に行く方がハードルが低いのではないか。しかし、マレーシアの不思議な魅力に強く惹かれ、応募しようと決意。派遣団員として採用していただいた。そして、8月25日。私を乗せた飛行機は、マレーシアへ向けて飛び立った。

マレーシアに着いて初めての食事。Teh tarikというマレーシアで有名なミルクティーを皆で頼んだのだが、正直飲むのが怖かった。中に氷が入っていたから。“海外に行った際に飲み物に入っていた氷でお腹を壊した”という話をかつて聞いたことがあった。氷を作る水道水の衛生状態が悪いから、氷には気をつけなくては。そんな先入観から、結局、ほとんど口をつけられなかった。飲んだ人たちは後でお腹壊すだろうな―――?でも、そんなことは誰にも一向に起きなかった。

マレーシアに対して抱いていた誤解。マレーシアの発展状況を、自分はよく知らなかったのだ。その後、さすがに水道水をそのまま飲むことはなかったが、いつの間にか水道水で歯磨き。

ルックマレーシアプログラムを通じて、非常に多くの貴重な経験を得た。在マレーシア日本国大使館、マレーシア政府観光局本局、JICAやJETRO訪問の際の職員の方々による貴重なお話の数々。それから、現地大学での留学体験、その大学内でのさまざまな交流。今まで海外に行ったことのない自分にとってはもちろん、これほど多くの外国人学生との交流も初めてだった。現地の大学生には、マレーシアについて色々教えてくれたり、さまざまなところに連れて行ってくれたり、と非常にお世話になった。

そして、自由時間。このプログラムでは、観光局の定めた一日のプログラムが終わった後自由に行動できる時間があり、興味・関心に合わせてさまざまなものを見ることができた。例えば、ヒンドゥー教の聖地であるバツー洞窟を見学。モスクと照らし合わせることで、マレーシアが多宗教であることや、それぞれの宗教の違いを肌で感じた。また、奇遇にも独立記念日のカウントダウンを見ることもできた。ステージで歌手が歌い、たくさんの花火が打ちあがり、群衆は国旗を振り回す。マレーシア人のナショナリズムを垣間見た。

先に触れたとおり、マレーシアの特質として民族・文化・宗教の多様性が挙げられる。マレーシアでは、チャイナタウンの中にヒンドゥー教の寺院があったり、ショッピングセンターのフードコートでは中華料理、マレー料理、インド料理…とさまざまな料理が一度に楽しめたりと、身近なところでその多様性を実感できる。それだけではない。ルックマレーシアプログラムを通して感じた多様性の数々。例えば、クアラルンプール市内の古びた建物と近代的な高層建築が混ざり合う様子。建設中の高層ビルの前で、お金を求める人々、散乱するごみ。まさに発展途上。その発展途上の街、クアラルンプールからほんの数十分のところには、本格的なジャングルトレッキングを楽しむことのできるFRIMという施設もある。そこでは様々な動植物に圧倒される。お分かりかと思うが、マレーシアは多様な文化、素晴らしい自然を手軽に味わうことができる国である。ちなみに、ホームステイに訪れた村は、あたりは田畑しかない田舎なのに、子供たちが一番興味をもっているのはアプリゲーム。彼らは自分の携帯を持っていて、使いこなしている。田舎にも情報技術の結集が普及していた。恐るべし。これもまた、発展途上。

ここまで、多様性について話してきたが、多様性にあふれているのはマレーシアだけではない。金・モノ・人の国境を超えた移動は活発になっている上、インターネットの発達で、日本にいてもSNS等を通して海外の人々との交流も可能だ。海外の「異質」なものは身近なところにまでにどんどん入り込んできている。そのような多様化する社会の中で生き抜いていくためには、国内外問わず、様々な価値観や考え方に触れることのできる経験を積むことが必要になってくるのではないだろうか。そのため、このプログラムを通して、最も強く思ったことは、とにかく経験が大事、ということである。自分のこの目で見て、臆さず試す。ただ、経験の際に、それにまつわる十分な知識をもっていると良い。机の上で終わりにしてしまうのは勿体無い。自分が世界に出たときに、机の上で学んだことがこんなにも役に立つのだということに気づく。それと同時に、今まで積み重ねてきた知識の上に新たな知識が加わり、さらに、知識だけでは対応できないことの存在に気づいて、どう”本物”と向き合っていくかを考えることとなる。

そして、今回の経験を踏まえて、私はまた学び、経験するのだ。自分の未熟さを思い知った3週間だった。語学がより堪能ならばさらに円滑なコミュニケーションを図れたのに、日本に関してより広範な知識があれば現地の学生の質問に答えられたのに…など挙げだせばキリがない。自分が今教養学部という、多岐に渡る知識を身につけることのできる場にいるのだから、この環境を生かすということを、改めて心に留めておきたい。自分自身も、大学生活4年間で、多様な価値観や考え方に触れ、視野を広げていきたいと思っている。今回の経験を生かし、物事をより多面的にとらえることができるよう、成長させていきたい。

最後になりましたが、ともに3週間を過ごした15人と、マレーシア政府観光局の徳永さんとヌルルさん、エアアジアXの坪川さんはじめ、このプログラムに関わってくださったすべての方々に感謝致します。このプログラムでの貴重な経験、出会いを大切にして、今後も頑張っていく次第です。ありがとうございました。