派遣生レポート

ルックマレーシアプログラム(LMP)を終えて

関西学院大学 文学部 文学言語学科
池内 千晶

私は、12月からの就職活動に備え、いま一度、世界に出て自分自身を見つめ直したいという強い気持ちから参加を希望しました。このプログラムは政府関係の訪問機会が含まれています。マレーシア政府観光局、日本大使館、JICA、UNITED VOICE、JETRO、パナソニック工場等の見学は、大学生の今だからこそ見ておきたい内容だと思います。将来、海外勤務を目標としている私にとって、実際に世界で働いている人々の様子を間近で見て、質問する機会がとても貴重な経験となりました。特にJICAの青年海外協力隊員として、知的障害者施設UNIED VOICEに勤務されていた方からお話を聞けたのが印象に残りました。マレーシアという異国の地で働くにあたって、大変な事、心がけている事等、自身の経験に基づいており、真剣に受け止める事が出来ました。

今まで私は、留学や海外研修の度に、あまり日本人とはかかわらず現地の人々と交流していました。大学ではサークル活動等に参加せず、大学生らしい経験がありませんでした。その為、ルックマレーシアプログラム(以下LMP)に参加が決定した当初は、嬉しかったと同時に初対面の仲間達と仲良くなれるのか、不安でした。しかし、すぐに打ち解け、関東、関西という枠組みを超えて仲良くなれました。提言の話し合いで誤解が生まれ、すれ違った時もありましたが、話し合いでその溝を埋めることが出来ました。自由時間があったので、自分自身が興味、関心を持った事をすぐに実行できる充実した毎日を過ごしていました。

日本人は外国に行くと日本人だけで固まってしまうとよく言われます。実際、韓国へ交換留学した際、そう思いました。そして違和感を覚えました。それ以来、私は外国で日本人とばかり話をするだけでなく、現地の人々とたくさん出会い、交流を持とうと思うようになりました。その甲斐あって、韓国では日本と異なる国民性や価値観を肌で感じることが出来ました。その一方、私一人で行動することが多くなり、不安のあまり行動に移せない時が何度もありました。今回、15人の個性豊かな仲間と出会い、一人では決して出来ないことをたくさん経験しました。例えば、自由時間の度に疲れた体を引きずりつつも、現地の人との交流を目指して、観光しました。仲間と一緒なら、初めてのモノレールや鉄道利用も怖くありませんでした。バツ―洞窟から帰る夜道、サポートにあたって下さったヌルルさんや、一緒に行ったメンバーがいたからこそ、タクシーの運転手と値段交渉ができ、念願のタクシー乗車を果たせました。私一人だったらきっとぼったくりに合っていたと思います。仲間と助け合い、協力する大切さを改めて学びました。LMPを通して異国の地で15人の仲間達と3週間の充実した時間を過ごせた事は私にとって、とても貴重な財産となりました。

LMPに参加してもう一つ学んだことがあります。それは、自分自身の無知についてです。この活動を通して、私はたくさんの人に出会いました。他大学の学生と意見交換をして、日本のことや自分自身の将来について深く考えている学生の存在を知り、彼らからとても影響や刺激を受けました。大切な仲間が今も精一杯努力を続けていると思うと、私も頑張ろうという気がわいてきます。提言の話し合いの際、何度も周りの深い意見に驚きました。「学生だから、提言として出来ることには限界がある」と私は悲観的に考えていた部分がありました。しかし、メンバーの話を聞いていくうちに「学生だからこそ出来る事は多く、学ぶチャンスや挑戦するチャンスに恵まれている。もっと当事者意識を持って積極的に提言に対しアプローチする必要があるのだ」と考えるようになりました。

またマレーシアの学生達からも刺激を受けました。休日に、マレーシアの学生達とGenting Highland(アミューズメントパーク)に行く機会がありました。彼らはとても親切でフレンドリーでした。一日中、遊園地で一緒に遊び尽くしました。マレーシア人の友人とたくさん交流することができ、とても楽しかったです。その経験から、友情は国も宗教の壁も年齢差も超えて、成り立つものだということを感じました。一人一人価値観は異なっても、対話によって心の距離を近づけることは可能だと実感しました。

マレーシアの学生たちは英語を臆することなく、どんどん話していました。細かい文法ミス等をいちいち気にするのではなく、自分自身の中にある伝えたい事を一生懸命伝えていこうとするその姿勢は、学ぶべき点が多いと感じました。それこそが本来のコミュニケーションであり、今後グローバル化が進んでいく社会において声高に求められているグローバル人材なのではないか、と思いました。日本人は島国という地理的要因もあってか、異なる背景を持つ人間に対しての視線が厳しいという印象があります。しかし、国際化が進んでいくにつれ、日本でも宗教や人種の違いを互いに受け入れ、尊重するという、マレーシア人の受容力を持てるような広い視野を持った人材が増えていく必要があります。

そう思ったのはKLIUCのグローバルコミュニケーションの講義がきっかけでした。”Don’t think I know all. And think locally, act globally!” と講義の最後に先生がおっしゃいました。自分の至らない所や無知を知ることで、偏見を持つことを避けられます。これからどんどん国際化の進む社会では、膨大な情報に惑わされずに、宗教や文化、他者に対しての正しい理解が必要不可欠です。経験を積めば積むほど、つい自分は多くのことを知っていると思い込んでしまうでしょう。しかし、講義で学んだように、私たちの人生や積み重ねてきた経験は一枚の大きなピザの一切れにしか過ぎないという事実を見落としてはいけません。だからこそ、フラット化が進む国際社会の中で他者への尊厳を忘れてはならないのです。

LMPに参加して、本当に多くの事を学び、経験しました。時にはけんかし、時には涙し、楽しい日々を共に過ごした仲間を一生大切にしていきたいです。自分のまだまだ至らない点や気づかなかった強みを見出せたLMPは、就職活動にも活かせると思います。そして、私の中で、もっと海外勤務への憧れが強くなりました。さらなる英語力の向上を目指して努力を続けていきます。加えて、自分の見識をさらに広げる必要性も感じています。英語が上手く話せるから、海外で働けるわけではないと学んだからです。KLIUCで出会った先生方は皆、高い英語力を持っていました。しかし、それだけでなく、例えば他国の文化や企業への強い関心、ユーモアの才能、専攻以外の他分野でも深い知識があるといった、人間として魅力のある方々でした。そういった人間に私もなりたいです。大学では専攻科目だけでなく、政治や経済、社会福祉といった他学部の授業も積極的に学んでいこうと思っています。様々な文献にふれ合い、向上心を持って毎日生活していこうと思います。この経験を糧に将来国際社会で活躍できる人材となれるようにこれからも一層、努力していきます。

LMPは是非とも多くの学生に参加してもらいたいプログラムです。多くを学び取ることのできる学生時代にマレーシアで社会問題、外国から見た日本像、そして世界で自分がどれほど通用するのか、はっきりと認識するために是非参加して頂きたいです。LMPは、普通の観光旅行では絶対に出来ない経験が出来るプログラムだと思います。

最後になりましたが、LMPを企画、主催して下さった関係各位の皆様に感謝します。本当に有難うございました。